ウェスタン州はパプアニューギニア西部の州で、インドネシアの国境に面し、大きく3つの地域、北フライ(North Fly)・中フライ(Middle Fly)・南フライ(South Fly)に分かれています。面積は13,138km2、そのほとんどがジャングルに覆われています。北部にある標高3,727mmのスターマウンテン山はサンダウン州との自然の境界線となっています

海抜は非常に低く、年間を通して蒸し暑い気候です。キウンガでは乾季に当たる6月から11月は比較的涼しく、12月から5月までは降水量が多くなりますが、雨季・乾季のはっきりした差はありません。基本的に夜雨がふり、日中は晴れているという日が続きます。ウェスタン州北部のタブビル周辺は年間を通して降水量が多く、平均気温は19度から27度ぐらいになります。
ウェスタン州は3つの大きな河川、アリス川・フライ川・ストリックランド川、の源流があります。フライ川とストリックランド川は合流し、川幅最大227mm, 長さ1,200kmのパプアニューギニア最長のフライ川を形成し、その流域はキウンガからは790km先の海まで熱帯雨林を形成しています。

概要

面積:
13,138kms
流域面積:
 
年間降水量:
8,000mm
人口:
67,000
言語:
アウィン・フェイオル・ヨンゴム
特産物:
銅、ゴム 

人口統計

北フライ地区の人口は約67,000人で、(2000年に行われた国勢調査による)人口密度は1平方キロメートルあたり5人となっています。人口の3分の1はキウンガやタブビルといった都市部に集中しています。鉱山会社 Ok Tedi Mine Limited(OTML)の設立により、大幅に人口が増加した経緯があります。OTML(Ok Tedi Mine Limited)創業前の1980年当時は、タブビルの人口は約600人、キウンガは1,470人であったといわれていますが、現在ではタブビルの人口は12,500人、キウンガは8,300人と大幅に増加しました。男女比は特に目立った傾向はありません。
人口の約42%が5歳から29歳で構成されています。ノースフライ地区の人口は流動的で、近年は僻地の村からアクセスのよい地域へと移動する傾向があります。人口増加率は年に3.3%となっていて、急激な人口増加はパプアニューギニアの他の州でも解決すべき問題となっているようです。

開発分野

健康
保健衛生は20年間向上してきました。幼年出産はへり、平均寿命は延びてきています。しかし未だ改善されていない地域も多く残り、肺結核やマラリアなどのような治癒可能な病気でなるなる方もいます。
特に保険医療施設でのスタッフ不足は深刻です。州政府の財源も十分でないため、健康診断等を導入や、家族計画の指導などを行うことも難しい状況です。
キウンガにある州立病院には現在常駐している医師が約7年間在籍せず、2004年までは救急車も配備できませんでした。多くの医療機材は壊れ、修理の見通しも立っていません。
重要な医療機器も入手できない状況です。重篤な患者はルンギナイヘルスセンターか、タブビルホスピタルへ搬送されます。
OTMLは現在さまざまな保健衛生活動を提供し、周囲のコミュニティーや労働者、村人のためにタブビルで病院を運営しています。また、OTMLの影響下の地域は税額控除や信用開発基金が保健衛生施設の基盤や維持に利用されています。
AusAIDも保健衛生分野で、Health Sector Support Program (HSSP)として、HIV/AIDS対策や女性や子供の保健衛生について援助をしています。Aus AIDのサポートは各個へのトレーニングや薬剤の各医療施設への配布といった形で行われています。しかし、医療機器の維持や保健衛生の基盤は未だ不足しています。
水の供給事業がないことによる安全な飲料水の供給は各村落での問題となっています。これらの問題は各地方レベル政府に任されていました。水の供給は行われたのですが、機器の維持管理不足により機能しなくなりました。OTMLのTrust Programのもとでウォータータンクの設置をしましたが、これらも現在機能していないものがあります。

教育
1990年中ごろからの教育改革は、北フライ地区に学校が多く建設される要因となりました。現在19のエレメンタリースクール、48のロワープライマリースクール、18のハイアープライマリースクール、2のロアーセカンダリースクールと1のアッパーセカンダリースクールおよび2の職業訓練校があります。

基盤整備

輸送・通信
キウンガ-タブビル間127kmの道路は北フライ州のメインの輸送経路です。約5百万キナをかけてOTMLにより整備されています。その他の支線道路は路面状況が悪いため、晴天時でなければ利用が困難です。

貨物運搬
キウンガやオクテディ、タブビルへの物資はフライ川を利用した船舶により運搬され、キウンガはその主要な港となっています。1997年のエル・ニーニョのために降水量が激減しフライ川の船舶の運航が不可能になったことを踏まえ、州政府は会場貨物輸送を確実にするため、より深い水深をもった港の建設と、アイアンバック-キウンガ間の道路の建設を計画しています。

空路
キウンガは同州で唯一舗装された滑走路を持つ空港があります。しかしこの滑走路は大型の飛行機の離陸には距離が短すぎます。現在まで19の空港がありましたが、多くの空港がメンテナンス不足のため閉鎖となっています。

通信
キウンガとタブビルは電話のほか、無線機による通信が可能です。それ以外の地域では2ウェイVHF無線を使用しています。ニンゲルムには1998年に衛星電話が開通していますが、一度も利用されていません。カソリック協会とECPは独自の無線システムを所有しています。キウンガやタブビル以外の地域には電話が通っていません。

治安状況

警察が配置され、定員105人うち79人のみが任務を遂行していますが、3分の1がキウンガやタブビル以外の地域に配置されています。
ニンゲルムにあった刑務所は7年間閉鎖されていましたが、2004年に再開されました。州政府やOTMLはこの施設の維持のために経済的、物的援助を行っています。しかし、パプアニューギニアの他の地域に比べ、治安は非常によい状態に保たれています。

経済開発

州の経済はOk Tedi鉱山会社により支援され、その閉鎖まで続きます。Ok Tediによる操業に対する影響を受けるタブビルや周辺の村落に対し、損失補てん、ロイヤリティ、雇用機会および健康、教育、輸送、商業サービスへの改善を提供しています。しかしこれが不均衡を生み、Ok Tediの影響を受けなかった地域は開発がなされないままです。州政府の不適切な流用のため、さらに影響を与えることとなりました。

農業と家畜
他の州と同様に、北フライ地区の人口は伝統的な農家や狩猟家、猟師で構成されています。市街地では正式な雇用もあり、自家使用のための農業を行っている方もいます。Ok Tediの影響を受けなかったコミュニティーはその生活を継続していきます。

換金作物
ゴムは唯一の効果的な換金作物です。現在1,700エーカーの土地でゴムが栽培されています。年間生産量はウェスタン州の46.4%である48万20kgです。ゴム産業を経営するフライラバーリミテッドは2008年までにゴムの栽培面積を8,000まで増加させるよう計画しています。しかし、成木が村にあっても、すでにOTMLによりロイヤリティが支払われている場合は、村人がゴムの栽培に積極的ではありません。
キウンガのラバー工場は8,000ヘクター分のゴムを処理できます。栽培農家一軒あたり年間900.00キナの収入をあげることができます。現在はその25%しか稼動していません。
Mindptana(2004年にNECにより承認された)は1年あたりおよそ5,000トンを工場にもたらすでしょう。レークマレー地区にあるPNG Project(ゴム産業へ投資するメジャーな団体)によって、さらにゴム生産をあげ、工場生産を増加させるでしょう。北フライではウェスタン州でおよそ15,000エーカーまで栽培面積を増加させる予定です。

バニラ
バニラは新しく導入された換金作物で、収入源としての大きな可能性を持っています。2004年に州政府からの基金によって、バニラ栽培は増加しています。バニラ栽培に興味を持つ農家は多いのですが、新しく導入された作物なので、栽培方法等の訓練が必要になります。